10月22日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

東京から来たという少女は僕にこう言った。

「私、波の音嫌いなのよね。いつになったら止んでくれるのかしら」

ワンピースを着た色白の彼女に会ったのはそれきり。

それでも僕は、その言葉が忘れられなくなってしまった。

海岸沿いにある僕の部屋で、僕は耳を塞がないと生きていけなくなってしまった。

波の音は止んでくれない。

その音を聞く度に僕は、見ず知らずの少女のことを思い出して、空想に耽ってしまう。

そうやって、嫌いなものが増えて、生きにくくなっていって、彼女の手が恋しくなってしまうのだ。

いつも僕の耳元で嫌いを語る彼女。

海岸沿いの街で波の音が嫌いな人は、見えない彼女と僕だけだった。

※この物語はフィクションです