10月19日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

初めての東京で人混みに流されていたら、道に迷ってしまった。

誰かに道を聞くたびに、みんながみんな違うことを言う。

そのうちに、自分がどこに行くつもりだったのかさえわからなくなってしまった。

目の前に現れた雑貨店に入ったら、なんとなく好みの小箱があって、少し高い額を払って買った。

店員さんは、これも何かの巡り合わせですねと言う。

もし僕が、人混みに流されずに歩けたら。

もし僕が、人に道を聞かなくても歩けたら。

手元にはタイプライターのような書体で二千円と印字された小さな紙。

それを僕は小箱の中にしまった。

人混みに流されても、帰りの新幹線には乗り遅れないようにしようと思った。

※この物語はフィクションです