10月7日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

蜃気楼、一晩だけ現れる楼閣。

僕たちは偶然にこの部屋で宿を共にしている。

騒がしい部屋の中で、時間はゆっくりと、しかし着実に流れ、誰もが逆らうことができずにいる。

なんとなく過ごしていた今日の日を、懐かしく思う日はきっと来る。

そんな風に感傷に浸っているのは、きっと僕だけなのだろうけど。

紙で手を切った。

じんわりと赤が皮膚の上を侵蝕する。

喧噪の中で確かに僕は傷を作っていた。

いつか治る傷は、けれど今すぐに治るわけではない。

今僕だけが感じている小さな痛み。生きていて必ず感じる小さな痛み。

※この物語はフィクションです