【今日のエモい情景】
蜃気楼、一晩だけ現れる楼閣。
僕たちは偶然にこの部屋で宿を共にしている。
騒がしい部屋の中で、時間はゆっくりと、しかし着実に流れ、誰もが逆らうことができずにいる。
なんとなく過ごしていた今日の日を、懐かしく思う日はきっと来る。
そんな風に感傷に浸っているのは、きっと僕だけなのだろうけど。
紙で手を切った。
じんわりと赤が皮膚の上を侵蝕する。
喧噪の中で確かに僕は傷を作っていた。
いつか治る傷は、けれど今すぐに治るわけではない。
今僕だけが感じている小さな痛み。生きていて必ず感じる小さな痛み。
※この物語はフィクションです
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