10月1日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

「武器を取れ、誰かを愛する者たちよ」

街宣車のアジテーションは今日も狂ったようにうるさい。

僕は久しぶりに散髪に来ていた。

僕の担当だったおじさんはもういない。

徴兵されてしまったので生きているのかどうかすらわからない。

おじさんの奥さんは髪を切るのがあまりうまくない。

短すぎる前髪を見て、奥さんは「ごめんねえ」と言って寂しげに笑った。

広くなったおでこをなでると、藍色の気持ちというものが少しだけ分かった気がした。

一滴でも朱を落とせないか。

ぎこちない笑顔ばかり噎せ返るほど溢れる藍色の街に生きる僕だった。

※この物語はフィクションです