9月25日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

その柵の向こうは、別世界だった。

彼女は言う。「ねえ、向こうに言ってみようよ」

確か、ここには家があったはずだ。家があって、森があって、その先には、確か……。

彼女は言う。「何してるの? おいてくよー」

ああ、僕はこの先には進めないみたいなんだ。

あの頃乗り越えた柵は、今ではとても高くなってしまって、脚を掛ける継ぎ目もない。

家もない。森もない。草も生えない平らな砂の上には、幾つかの重機。

それに比べてあの頃はなかった、広い空だけがあった。

十年前、ランドセルを背負った彼女と毎日通った場所。

アクリル板の向こうは、別世界だった。

※この物語はフィクションです