【今日のエモい情景】
雨が降っていたので雨の歌を口ずさみながら帰りました。
信号待ちの時にお母さんに連れられたカッパの女の子が、「青いお月様、見たかったなあ」と言っていました。
私はついぞ青いお月様など見たことがありませんでしたので、見てみたいものだと思いながら信号を待っていました。
ヘッドライトに照らされる雨粒は青と言うよりは白だし、球というよりは線なのでした。
信号を渡ったところで女の子たちは私とは逆の方向に歩いて行きます。
その頃にはもう女の子は、水たまりをべしゃべしゃやることに夢中になっていましたから月のことなど忘れたのでしょう。
一方私もさっき口ずさんでいた歌の続きを歌おうとしても思い出せなくて、義務感を持って水たまりに飛び込みました。
事務的にべしゃべしゃしました。
もう十分べしゃべしゃして義理も果たせたかなと思ったところで振り向くと、カッパのシルエットはもうありません。
月が青かったら空に溶けてしまうから、子供の想像力は分からないものだと思いながら蛍光灯の反射を踏みつけました。
※この物語はフィクションです
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