9月14日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

夏は終わったなんて、信じられないでいる九月の日。

久しぶりに会った彼女は動きやすそうなジーンズ姿で、髪はバッサリ切られていた。

「そっちは頑張ってるって聞くよ。偉いね」あの頃はしない褒め方が、気持ち悪い。

もう社会人なのか。後輩もできる頃合いだ。

大人ぶっていたあの頃の俺と同じ年。現実は何事もなかったように現実を突きつける。

不自然だったあの頃とは違う不自然さ。みかんの中に混じっていたりんごから、みかんの味がする感覚。

やめろ。俺を肯定しないでくれ。

「お前はもう、諦めたのか?」俺の喉から出た声は、震えていたと思う。

「自分に甘いのは変わらないね」見慣れないベリーショートの彼女がはにかむ。

その瞬間だけは薬指の金属を感じないあの夏だった。

※この物語はフィクションです