【今日のエモい情景】
楽しかった日々に戻れたとして、再び訪れた楽しい日々を、僕はもう一度楽しめるのか。
「楽しかったよ」彼女は言った。街灯に集まった蛾を僕は見ていた。
「また今度」彼女は言った。僕が彼女を見たときには彼女はもう向こうを向いていた。
楽しかった日々には戻れないけれど、そんなこと分かっているのだけれど。
考えてしまわざるを得ないほど、色褪せたあの日々は綺麗に映る。
「心の底から楽しかった日々って本当にあった?」彼女の声でそれは再生される。
「いつも何かを押し込めて楽しかったことにして、それを思い出して悲しんでるんじゃないの?」
そうなのかもしれない。彼女の僕を呼ぶ声だけ、なぜか再生できなくて少し悲しくなる。
楽しかった日々に戻れたとして、色褪せたその色は目に映らない。
鮮やかな原色は苦しくて、きっと泣いてしまう。
※この物語はフィクションです
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