9月2日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

「もしも、明日人類が滅びたらさ」電話越しにわたしは突拍子もないことを。

「なにそれ、例え話?」電話の声は少し歪んでいる。「うん」わたしは目をこする。「例え話だよ」

「もしも、明日人類が滅びたら、わたしがあなたと最後に会ったのは去年のことになるんだね」

「なんだよそれ」電話の声は少し歪んでいる。「週一で電話してるじゃん」

その声は、まるであの人じゃないかのように、歪んでいる。

「ダブリン、楽しい?」わたしは聞くけど返事は決まっている。「ああ、楽しいよ」

その定型句が分かることは彼の条件ではないはずなのだ。

彼がそこにいることを疑っているわけじゃない。疑うべきは彼の声を忘れてしまうかもしれないわたしの方。

「わたしね、昨日学校休んだんだ」それは本当のことだった。本当であることが情けなかった。

「おやすみ」声を待たずに切った電話。わたしからなくなった三キロ分は、あなたからの愛だったのかしら。

※この物語はフィクションです