8月30日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

クーラーの利いたリビングでは熱戦が繰り広げられていた。

「っしゃ! 殺した!」諸手を挙げた私。「うわー、ひでー」コントローラーを置いた彼。

「ざまあ」ベロを出した私。「それが好きな男にする態度かよ……」傍らの缶ビールを空ける彼。

お互いスーツを着崩したまま、格闘ゲームに熱中していた。

冷蔵庫にペットボトルを取りに行く彼の後ろ姿が、ひどく優しく思える。

三十分前とは違う理由で泣きそうになる私を見ずに、彼は何もなかったみたいに尋ねる。

「明日、会社行けそうか? それとも明日もゲームするか?」返事の代わりに曖昧な顔で彼を見る私。

「俺はお前の分まで稼いでくるぜ」ペットボトルを片手に腕まくりをする彼は、照明の具合だろうか、眩しく見えた。

「……あと一回勝ったら行く」クッションを抱き直す私。「おっ、じゃあ本気出すわ」指を鳴らす彼。

日付はもう少しで、変わろうとしていた。

※この物語はフィクションです