8月23日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

田んぼに落ちました。

落ちそうになった私の腕をつかんでくれたあの子も引きづられて一緒に落ちました。

制服がドロドロになりました。

あの子、眼鏡に泥が撥ねててすごい顔をしていたので、眼鏡のレンズに泥を塗ってやりました。

前が見えないあの子は手探りで私を探すのですが、その様子が激しく滑稽で、吹き出したら泥を投げつけられました。

あの子にバレないように私が後ろに回ろうとすると、足下からヌッチャヌッチャという音が響くのが馬鹿みたいでした。

けれどその音を頼りにレスリングの選手のような臨戦態勢を取るあの子も面白すぎて、二人で笑っていたのでした。

夏期講習の帰り道、私は高三の夏というとあの日を思い出します。

受験の中で消え去ってしまういくつもの日々の中で、その日だけは妙に輝いているように見えるのです。

女優になったあの子がラジオの中で言っている話を聞きながら、いつの間にか私の頬を涙が伝っていたのでした。

※この物語はフィクションです