8月16日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

真夏の遊園地、クマの着ぐるみが日向にぽつりと立っている。

名前もない着ぐるみ。風船を持った着ぐるみは、おどけて私にさえ風船を差し出す。

夏休みなのに高校の制服を着て、ただ一人でふらふらと歩く私が哀れに見えたのだろうか。

私は誰かになりたかった。

誰にも違和感を感じられない、確固とした『誰か』に。

それはきっと、こういう形なのかもしれない。

周囲の視線を遮るかぶり物、その向こうにいる誰かの瞳が見えた。

私みたいだな、と思ってふと、私は自分の理想を恥じた。

「私はあなたにはなれないわ。ごめんなさい」

着ぐるみの手から離れた風船は、空の方へと舞い上がっていった。

※この物語はフィクションです