7月21日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

今年になってからお姉ちゃんが少しだけ優しくなったことに、彼はどれくらい気づいているのだろう。

まだ拙いピアノの旋律は、春と比べて大分うまくなった。

それまでは真面目に聞いた事なんて無かった。

私にとって高校生活最後の夏は、彼にとっては最期の夏。

受験勉強をしないといけないと思っていても、ピアノの音を聞いてしまう。

彼だけじゃない。家族みんなにとって最後の夏なのだ。

少しずつ上達していく音色は、あるところでもう上達することはなくなる。

蝉時雨が騒がしいのは、短命だからなのかもしれない。

その蝉時雨を、彼はいつものようにうるさいと思いながら聞いて、ある日を境に聞くことができなくなる。

ピアノの音を聞きながら、一瞬で過ぎてしまう夏を考えている。

※この物語はフィクションです