7月10日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

窓の外、カーテンを開いたその先に、探すまでもなく視界が捉えた月。

こんなに見られているように思えるのは初めてだ。

明るく、丸く、大きな月。

月が巨大なのぞき穴のようだと思うほど、その月はこちらを見ていた。

夜の町の喧噪は遠くにあり、騒がしさが在ることだけしかわからない。

俺を見ているのは月だけだ。

手に持ったナイフを月に向けて掲げる。

月が傷つけられたかのようにナイフから血が滑り落ちて、それでも何も変わらない月を気持ち悪いと思った。

後ろから、聞こえなくなったはずのうめき声が聞こえたので、俺は高笑いを響かせながら飛びかかって刺した。

「俺は狂人なんだ。仕方ないだろう?」と、そんな言い訳の中身さえも見られているように思えて、必死で腕を振った。

※この物語はフィクションです