7月6日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

夏の夜風で靡いた髪を小指で流す姿を見ていた。

「綺麗に生きる人は嫌い」彼女はそう言った。彼女の脳裏には僕のことがまだ残っているようだった。

決して綺麗に生きていたわけじゃなかったと思う。残酷なことだってたまにはしたし、悪いことだってたくさんした。

けれど、その死に様はあまりに普通の人じみていた。

まるで、綺麗に生きていたと思われても、何もかも綺麗だったものにされていてもおかしくないと、僕は思った。

「俺は綺麗になんて生きられないや」そう言った彼は何も知らない。

僕のことなんて知らない。彼女の愛した、彼女を愛した人がいたことなんて知らない。

ただ、僕はそれで良かった。

彼女に寄り添う人がいてくれることが、そっと手を握る人が隣にいてくれることがうれしかった。

夏の夜風に僕のにおいは混じらない。今の彼女に僕の奇跡はもう必要なくて、それが奇跡だと思えてしまうほどだった。

※この物語はフィクションです