6月18日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

「たい焼き、五つください」私はできるだけ低い声で言う。

「いらっしゃい、中身は何にします? 五つだと餡子と餅入ったやつと抹茶とチョコとカスタードがおすすめですね」

おじさん、やっぱりそれをおすすめしてくれるんだ。私は目深に被った帽子の中でうつむく。

「じゃあ、その組み合わせで」手に持った六百円、ずっと使えなかった六百円をレジの横に置く。

「お、女子大生」私の手に気づいたようで、おじさんは話しかけてきた。「なんだ、別れたのか」

「別れた?」首を傾げた私におじさんは、「なんだ、男でもできたんじゃないのか」とケロリと言う。

人の気も知らないで、そう思いながら私はその話に乗っかる。「男って最低ですよね、全く」

「まあ、たい焼き食って元気出しな。ちょっと餡の味変えたんだ。試してみてくれ」話すおじさんは何も変わらないまま。

ほんとに男って最低だ。私は帽子を脱いで頭を振る。

久しぶりに食べたたい焼きは、餡の塩味が前より利いてて新鮮だった。

※この物語はフィクションです