6月15日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】 

見慣れた暖簾をくぐると、いつもの店の半分が大学生集団で埋まっていた。

それでもいつもの俺の席が空いているのを確認して、店長を少し見直した。

「いらっしゃい」と、店長が奥から顔を出す。

その顔が『先輩の草履暖めておきましたよ』と言わんばかりの秀吉顔だったので、見直したことを若干後悔した。

「豚玉とビール」それだけの簡素な注文でも笑顔で受けてくれる。店長との付き合いは、もう十年じゃきかない。

店に活気があるのは店長にとっては願っても無いことだろう。

大学生集団は酒を飲まないようで、それでもまあ楽しそうで今の子は健全だと思いながら眺めていた。

「楽しそうでしょ。彼らそこにできた大学の子たちらしいですよ」店長がビールを片手にそう言う。

この店も、この町も、少しずつ変わっていくんだなあと思ってしまう。

「俺の席、取っといてくれてありがとな」と、言うつもりもなかった台詞が口から出て、気恥ずかしさはビールで流し込んだ。

※この物語はフィクションです