6月4日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

連休もとうの昔に過ぎ去り、当たり前のように店には閑古鳥が鳴いていた。

当たり前のような売れない六月は、なぜか毎年の六月とは違っている気がしてしまう。

きっとその脳裏にチラつく顔が、少し早い梅雨時のような心持ちの正体だ。

毎日のようにたい焼きを食べていく彼女が、何を考えていたかなんて、知らない。知りたくもない。

けれど、何かを期待していなかったかと言われたら、俺は曖昧にしか答えられない。

妻に先立たれてからやけっぱちでたい焼き屋を始めた俺のような男が、期待するのが間違いなのは分かっている。

見ず知らずの客に若い頃の妻を重ねていた俺の方が、間違ってるに決まっていたのだ。

しばらく前に焼き上がったたい焼きを、一口頬張る。

「そんなにおいしくないのかな、うちのたい焼き」

口に広がる甘さに塩味は混ざらない。塩の分量を間違えるほど素人じゃない。

※この物語はフィクションです