5月29日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

「上着、要らないね」そう言った僕の声が、君に届いていたみたいだ。

「これからどんどん暑くなっていくからね」君は愛おしそうに僕を見る。「暑いの、わかるんだ」

「なんだか、あんなに寒かったのが嘘みたいだ」僕は焼けそうなほど明るい窓の外を見て目を細めた。

「夏が来るのよ」君も嬉しそうに目を細める。「あなたはきっと、覚えていないでしょうけど」

「うん」僕はふふふと笑う。「それでも暑いのくらいはわかるよ」

身体にとって十五回目の夏は、僕の記憶にとっては初めての夏だ。

「ありがとね、暑いのにお見舞い来てくれて」僕から君にはお礼ばっかりだと思ったけど、言わない。

「ねえ、今度はアイス持ってこようか。夏になるんだからアイス食べないと」君ははしゃぐ。

君が喜ぶから、これから来る季節のことも好きになれそうだ。

こうやって僕は、少しずつ、夏を取り戻していく。

※この物語はフィクションです