3月27日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

連日の凍えるような寒さに俺は頭を抱えた。

いつになったら春になるんだ、長すぎるんだよ冬。

花見の時期になると毎年大盛況になるはずが、客なんかほとんど来やしない。

「律儀なんですね」と常連の女子大生がたい焼きを頬張りながら言う。

「これが商売なんでね」としばらく売れそうにないたい焼きを冷蔵庫に入れながらため息をついた。

「こんなにおいしいのに私以外誰も買いに来ないなんて」女子大生は三個目を手に取る。

「友達でも連れてきてくれればいいんだけどなあ」俺は嫌味を言いながら空になった皿を片付ける。

「明日も来ますから、それでいいでしょ?」口の端に餡をつけたまま女子大生は笑う。

「おう、来てくれ。ニ十人くらいになってきてくれ」俺は何も気づかないみたいに右手をくるくると振った。

閑散とした店の前を通りがかった猫がにゃあと鳴いたのが、春はまだ遠いことを笑うかのようだった。

※この物語はフィクションです