2月27日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

川べりで花束を掲げ、ひざまずいてプロポーズする男女を見て、クスクス笑うカップルが僕らだった。

「普通あんな大胆にやらないよね」と苦笑いで僕は言う。

「君がやらなかっただけで、私は求めてたかもよ?」絶対嘘の笑顔で彼女は言う。

彼らにとって特別な一瞬が、僕たちにとっては何でもない一瞬で、それがなんだか面白かった。

「そんな大げさにやらなくたって、なぜかこうなってるんだし、いいじゃんねえ」と僕は何も気にしてないそぶりで言う。

「ん、何かな?」と聞き返す彼女が、本当は聞こえてたのを僕はなんとなく察していた。

ロマンなんてどこにもない、ただの現実的な男女交際がここにはあった。

以心伝心もできなければ、いつまでも一緒になんていやしないだろうけど、好きだなあと思っているのも事実なので。

「君がまだ一緒にいてくれるならしてあげてもよかったかなあ」なんて上から目線で言ってもいいかなと思ったりする。

そんな些細な思いつきも、川上から流れてきた花束を見てこみ上げてくる二人の笑い声には勝てなかったのだった。

※この物語はフィクションです