2月10日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

「好きだったんだよ、多分」

雪に向かってつぶやく。

ビル群の間を埋めるように降り注ぐ雪の風景は、東京というカンバスに非現実を溶かしたようだった。

傘をささずに歩けるほど雪は小降りになって、足元に残るほどのものはない。

あの人を思い出しても感情の起伏がほとんどなくなってしまったのは、気持ちも雪と同じ不安定なものだからだろう。

いつかは降り止んで、積もったものもなくなって、降ったことすら忘れてしまう。

それでも止まない雪を、解けない氷を私は夢見ていたはずだった。

小降りになった雪を見ながら、どうしてあんなに降っていたのかわからなくなってしまった私がいる。

「どんなに今嫌いでも、あの時の気持ち全てを忘れたわけではないでしょう?」

そう、たしかに好きだったはずなのに、ほら、もう日が射してきた。

※この物語はフィクションです