9月6日 今日のエモい情景

【今日のエモい情景】

二十年前、意地を張って家を飛び出した。

この家も、この町も、花火の音も大嫌いだった。

この町で夏になると毎日のように聞こえてくる花火の音は、ただうるさいだけにしか感じない。

今になって思うと、家を出たのは若さ故の過ちだったと断言できる。

父は死に、母はぼけて、家を出てから会話をすることは一度もなかった。

今日、弟に呼ばれて、この町に戻ってきたが、仕事の都合で弟と会うこともできず、すべてが変わってしまったあと一人で歩く町は、何もかもが俺を許していないような気がした。

実家があったところは、何もない小さな更地になっていた。

何もない土地を見つめる俺の耳に、花火の音だけが響いている。

俺の生きてきた日々を問いかける重低音だけが、俺の鼓膜を揺らす。

※この物語はフィクションです