10 機械より人間らしくなれるか? AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる

ついに十冊目です。

今回読んだ本は「機械より人間らしくなれるか? AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる」という本で、原語での題は、「The Most Human Human: What Talking with Computers Teaches Us About What It Means to Be Alive」です。

The Most Human Human、日本語で言えば、最も人間らしい人間。

この本の著者は、「最も人間らしい人間」賞という賞のために奮闘します。

 

チューリングテストという試験があります。

「チューリングテストとは――

『機械には思考が可能か』という問いに答えを出すために、

数学者のアラン・チューリングが1950年に提案した試験である。

審判がコンピュータ端末を使って、

姿の見えない『2人』の相手と五分間ずつ、チャットする。

一方は本物の人間(サクラ役と呼ばれる)、一方はAI。

チャットが終わると、審判はどちらが本物の人間か、判断する。

もし、審判たちのうち、30%をだますようなAIがいれば、

それはもはや人間と同様に思考し、意識を持っていると考えていいだろう―――。

AIがチューリングテストにパスするとは、この基準をクリアすることを指す。」表紙裏より

年に一度チューリングテストを大々的に行うローブナー賞では、その年の参加したAIの中で、最も人間らしかったコンピュータに「最も人間らしいコンピュータ」賞を送り、最も人間らしかったサクラに「最も人間らしい人間」賞を送ります。

この本の書かれた2009年までには、まだチューリングテストにパスしたAIはありません。(それ以降どうなっているか調べてみたのですが、情報が錯綜していてよくわかりませんでした。)

筆者はどうやったら人間らしい人間になれるかを探り、コンピュータとは、人間とは何なのかに迫っていきます。

 

本文中で頻繁に出てくるのが、チェスの話です。

チェスは本来「芸術的なゲーム」であり「人間性の証し」とまで言われていました。(そのことにはおおむね科学者たちも同意していました。)

ゲーテはチェスのことを「知性の試金石」と呼んでいたそうです。

ですが、皆さんご存知の通り、チェス世界チャンピオンのガルリ・カスパロフは、IBMの作ったチェスAIディープブルーに敗北を喫します。

その瞬間世界中の科学者は手のひらを返したかのように「チェスはつまらないゲーム」と言い出したのです。

この様子を筆者は有名なジョークを引用して説明しています。

「ある男が医者を訪れて言う。『先生、俺は死人だ。しんじまった』

医者が尋ねる。『ほう、死人というのは……くすぐったいと感じるかね?』

『そんなわけねえだ、先生』

すると医者は男をくすぐりはじめた。男は身をよじりながら笑い声を上げる。『そらね』と医者は言う。

『わかっただろう』

『なんてこった、あんたの言う通りだ、先生』と男が叫ぶ。『死人ってのはくすぐったいと感じるんだな』」p146-p147

知性の試金石とまで呼ばれたゲームにおいて人間がコンピュータに勝てないのは、コンピュータが知性を手に入れたのか、それともそのゲームが知性の試金石ではなかったのか、どちらなのでしょうか。

 

さて、人間の会話、ボットの会話、人間性とAIなどについて、特に人間性の面からコンピュータをここまで詳しく掘り下げた本は珍しいと思います。

筆者はコンピュータサイエンスと哲学の二重学位を持ち、詩の美術学修士も持っているなんとも特殊な方です。

この三つの側面を見ることができないとこの本は書けなかったのではないかと思います。

人間がコンピュータに合わせるのではなく、コンピュータが人間に合わせていかないといけない時代がすぐそこに迫ってきている中で、人間について学ぶことはコンピュータを専門にしている人にとって急務だと思います。

この本はそのきっかけになるいい本だと思います。

 

筆者は最も人間らしい人間になれたのでしょうか?

それは実際に読んでみて確かめてください。

 

機械より人間らしくなれるか? AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる

著 ブライアン・クリスチャン

訳 吉田晋治

草思社

 

007.1

546

N