7 融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

今回は「融けるデザイン」という本を読みました。
といってもFMSの皆さんなら知らない人はいないはずですよね。
FMSの渡邊先生の著作で、FMS概論でも紹介されていました。
僕は仮配属先が渡邊研なので、読んでおかないとなあと思っていたのでした。
もしかしたら図書館で借りられるのはかなり先になるのかなと思っていましたが、運良く借りられて良かったです。

内容はFMS概論で話されていた内容を詳しくして、研究内容だけでなく歴史や概念にももっとフォーカスした感じといえば一番わかり易いかと思います。
僕は事前にFMS概論を聞いていたので、考え方の基礎はできていたようで、内容はかなりわかりやすく感じました。
この本は章立てがかなりわかりやすく、3,4,5章の情報の「身体化」「道具化」「環境化」という三つのテーマはすべてつながっている話なのに段々と世界観が広がっていくあたりがとても楽しく読めました。

僕が特に面白いと感じたところは、「くすぐり実験」の話(p124)ですね。
「マルチダミーカーソル実験」の話はFMS概論で聞いていた人は知っていると思います。
自分の動かせるカーソルの他にたくさんのダミーカーソルを置いても、人間は自分の動かせるカーソルがどれだかわかるという実験です。
自分の動かせるカーソルの動きにマウスを動かしたタイミングから少しだけ遅延を与えるとカーソルが見つかりにくくなります。
この遅延によって、自分の身体と身体ではないものの境界線が見えてきます。
これだけでも十分面白いのですが、くすぐり実験によってこの境界線が更に明確になります。
機械を使って自分で自分をくすぐると、くすぐったくありません。
機械を使おうと使うまいとそれは変わらないのですが、機械によってそこに300ミリ秒以上の遅延を発生させるとくすぐったさを感じるようになるそうです。
つまり自分の動きと連動して動いていたとしても、遅延のある連動であればそれを身体と認識できないということですね。

これは画面越しであろうとなかろうと通用する問題です。

筆者は今後の世界は「ワンメディア、マルチインターフェイス」(p225)になると予想しています。
それは、全てのメディアにインターネットが接続されて、インターネットという一つのメディアを様々なインターフェイスから見る、聞く、感じるという世界です。
デジタルネイティブ世代の僕らからするとこの世界観はもはや当然のものだと思えてしまいます。
様々なメディアがインターネットに情報をのせるようになり、インターネットとコラボレーションし、インターネットからかなりの情報が手に入るようになって行くのを自分の成長と同じように見ている僕らは、将来あらゆるメディアがインターネットの一部になってしまうという考えは、当たり前のもの、暗黙の了解であるように感じていました。

一方で旧時代的なメディアの代表と言ってもいい、紙を綴じた本からこの情報を得た僕は、本の時代の終わりをひしひしと感じています。
この本の中にも「TextureWorld」(p193)という映像作品が出てきますが、これは本だけでは全く意味がわからない代物です。
また、僕が次に読んでいる本は、テレビで特集番組を見て興味が湧いて借りた本なのですが、本だけではその本の良さがすべて伝えきれていないと思いました。
もちろん映像がすべて文字情報に勝るとは言いません。
素晴らしい読書体験は今後も増えていくと思います。
その一方で文字と写真やイラストだけでは伝えきれない情報が多く有ることも事実です。
本が今後どのようにインターネットと重なっていくのか、知ることができるのは、当たり前になるのは何十年後になるんでしょうか。

 

融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論

渡邊恵太
ビー・エヌ・エヌ新社

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