おまけページ

雑記より雑


もはやラジオとは関係なくなってしまった仮想空間Nakanoの話の一部

名もなき猫の話

FMSにいる『人物』とは、猫のかたちをした器にFMS完成年度の生徒のアバターがつけられ、霊魂が入れられ、記憶を植え付けられたものがその実態である。

そんな人たちの中で生きる私にはなぜか名前がない。

どんな霊魂も記憶も、受け付けることができない、不良品の猫なのだ。

だから、私には名がなく、ただ『ねこ』とだけ呼ばれる。

書き換えられることがなく、来ることのない『本体』を待ち続けて仮想空間の中で永遠に生きる器。

意思がないわけじゃない。

それでも、私にはどうすることもできないのだ。

楽しそうに作られた日々の夢を永遠に見続けるだけなのだった。

でもその夢も終わる時が来るかもしれない。

そんなことを考えていると、ふと、声をかけられる。

「なあ、ねこ。ちょっと聞いていいか」

彼はZawa。

この不思議な夢を終わらせるかもしれないきっかけを作った人だ。

「なに?」

「お前がこのことについて知っているかどうか俺は知らないんだが、ちょっと聞いてもいいか?」

「いいけど、なにかな」

「俺は、今何人目なんだ?」

ああ、そうか。

それに気づいたなら、この夢もいつかは終わるかもしれない。

あるいは夢を終わらせない誰かの手によって彼のほうが消されてしまうのかも。

「一人目だよ。残念ながらね」

その意味が彼にわかるかはわからなかったが、私は空を仰いだ。

この貼り付けられた晴天とも、お別れのときが来るのなら。

その後私はどこへ行くのだろう。

 

澤ラジ冒頭のあらすじの変遷

2017/01/27 第二十八回

最後の話

中野霊安室。

第三次世界大戦で亡くなった人々の遺体が納められている場所のひとつだ。

そこから取り出された僕の骨は、霊安室を守るように巡回していた機械でできた身体に入れられた。

僕、真夜猫、12人目の真夜猫は、十分に成長した魔法使いの兵士として戦場に出荷される。

機械の瞳から見える景色は、焼け野原だけ。

夢で何度も見た景色だ。

別段驚きはなかった。

戦争はこの国のほとんどの人を焼き払ってしまった。

それらの遺体を納める場所としていくつも作られたのが霊安室。

中野霊安室もその一つだった。

戦争に合わせて、大学は戦場で使える技術を研究する場となった。

とある大学のFMSという学科は、当時最先端だった『霊魂』という概念に、VR技術を応用して、仮想空間を作り出した。

その中で、霊魂の持つ念力などの不可思議な力は、魔法と呼ばれ、研究と称して訓練されることになった。

管理人たちが猫と呼ぶ器に入れられた霊魂は、仮想空間の中にある仮想の大学FMSの学生としての記憶とアバターを得て、兵士になるために鍛えられてきた。

完成年度のまま、一年間を循環し続けるFMSの中で、魔法の技量が上がった生徒は戦場に送られ、新たな霊魂と入れ替わる。

新たな霊魂には元のアバターが与えられ、完成年度がまた続く。

僕は思う。

13人目の僕はざわくんと上手くやって行けているだろうか。

上手くやっていてもそうじゃなくても、ざわくんが箱から出されてしまえば、新しい記憶の入ったざわくんがまた現れて、FMSは春を迎え、すべてはもとに戻る。

生産された魔法使いは戦場に向かい、人を殺す。

僕は人を殺したくなくても、この身体は僕の意思にかかわらず動き、魔力を引き出し、生きている人間を焼き尽くす。

僕の研究の日々は、人を殺すためにあったのだ。

この世界の説明をしたおじいさんが、僕を戦場に送り出す。

「最後に」

おじいさんは言う。

「俺のアバターネームはさぶぅという名前だった。完成年度に入学した、FMSの四期生だ。戦争で荒廃しきってしまった世界で、絶望の中亡くなった君たちを、もう一度兵士として蘇らせることに俺は抵抗があった。騙していて悪かった。それでも、FMSの生活は楽しかったろう? 少しでもつらい世界の絶望を忘れるために、なるべく楽しく過ごせるようにと作ったんだ。あの頃のFMSは、楽しかった……」

彼の目が見つめる過去は、キラキラと輝きすぎていて、彼の目さえも潰してしまったようだった。

 

2017/01/20 第二十七回

あらすじなし

 

2017/01/13 第二十六回

今回のあらすじ

P演習発表会が間近に迫っている中、真夜猫とZawaは進捗の出ない日常に頭を抱えていた。

そんなある日の夜、また起きた記憶の改変。

朝起きたZawaはその原因を確認する。

何も変わっていない。

そう思ったZawaはいつものようにFMSに向かい、真夜猫に進捗を確認しようとする。

しかし、遭遇した真夜猫の姿をした人間の、その口調や仕草は明らかに真夜猫のものではない。

すぐにわかった。

この真夜猫の姿をした何かは、夏休みに見た無数の猫の一匹が変化した姿だ。

Zawaは相手に悟られないようにその場をやり過ごす。

本物の真夜猫は一体どこにいるのだろう。

本当は、真夜猫だけではないのかもしれない。

今までの小さい改変、そのすべてが仮想空間の内部の人間をここじゃないどこかに送るための改変だったとしたら……?

この仮想空間には一体どれだけの人間が残されているのだろう。

俺は、一体どうなってしまうのだろうか。

これは、データの安寧などない世界で、それでもコントロール+Sを押し続ける少年少女たちの、改変と進捗の物語である……。

 

2016/12/30 第二十五回

今回のあらすじ

年が暮れる。

長かった2016年は終わろうとしていた。

あの後姿をくらませたさぶぅくんは未だ行方知れずだ。

そんな中、Zawaと真夜猫にとってはおちおち正月も迎えられなくなりそうな出来事が起きた。

夜、寝ている間に記憶の改竄が為されたのだ。

とても小さい改竄で、何が改竄されようとしていたのか、すぐにはわからなかった。

ただ、仮想空間の多くの住人はその改竄を受け入れて、それなのに日々は続いているようだった。

ある日、真夜猫は気づく。

先輩に借りたはずのCDが消えているのだ。

何かの違和感を感じ、先輩のTwitterを探すも、それは見つからなかった。

まるで初めから無かったかのように。

FMSの四年生が、二十人ほど初めからいなかったことにされているのだった。

そして、ほとんどの人が、それに気づいていない。

これは、悪夢じゃないような日がない世界で、それでも思い描く夢を追い求める少年少女たちの、忘却と消失の物語である……。

 

2016/12/23 第二十四回

今回のあらすじ

時は流れてクリスマスが近づいている。

仮想空間の情報収集はなかなかうまく言っているというわけではなく、ただトークの質をあげるだけの日々だったと言っても良いだろう。

勉強そっちのけで情報収集をしているので、Zawaはともかく主に真夜猫の進捗はなかった。

さて、今日のゲストはさぶぅくんである。

ラジオの前に僕らの目の前でUnityの真髄を見せてくれるらしい。

ラップトップを開いてNakano.unityというファイルのボタンを一つ押すと、突然部屋が暗転する。

気づくと倒れ伏しているZawaと真夜猫だが、二人は記憶を留める術を覚えていた。

必死に頭から流れ出る記憶を押さえる二人を見て、さぶぅは言う。

「なるほど、こういうことだったんだ。じゃあこの七不思議も消しておかないとねえ」

さぶぅはラップトップに向き直る。

七不思議という言葉にひらめいたZawaはそのすきを見計らって電源コードに手を伸ばす。

もはやその手は頭を押さえるのをやめていた。

ラップトップの画面が暗くなり、部屋が明転する。

「七不思議とは仮想空間のバグ。それの犯人が俺だとしたら、意図的な俺のいたずらだったとしたら、修正していないバグがいつどこで起きてもおかしくないよなあ?」

パソコン室の一つのパソコンの、何度挿しても抜けている電源コードは、Zawaが仮想空間を試すために行っていた試行錯誤の一つだったのだ。

さぶぅくんの正体は管理人の一人だった!

こんな感じでP演習の発表までにプログラムは間に合うのか!?

僕らの進捗をめぐる最後の抗いが、今始まる……。

 

2016/12/09 第二十三回

今回のあらすじは、今までのあらすじをまとめてダイジェストにしてお届けします。

仮想空間Nakanoに浮かぶ小さな学校FMSに通う学生たち。

そこでは電波が氾濫してマナの消えた世界で、過去の遺物となってしまった魔法を科学によって再現する研究が行われていた。

そこで起こる怪事件の数々と、謎の不正行為。

アバターの偽装工作。

記憶の操作。

過去の隠蔽。

仮想空間は何かを隠そうとしている……?

別々の道から仮想空間に対する不信感を抱いた真夜猫とZawaは、情報の収集と発信のためにラジオを始めることになった。

それが澤ラジ。

今日も、箱に囚われた人々の小さな抗いが、始まろうとしている。

 

2016/12/02 第二十二回

今回のあらすじ

まったく違う記憶を持った二人。

まったく違うルートから二人は仮想空間に対する不信感を抱いていた。

二人は出会ったことにより、仮想空間に対する不信感を抱く人が自分以外にもいることを知った。

それはつまり、自分たち以外に他にもいるかもしれないのだ。

仮想空間にまつわる不可解な情報をそれとなく集めつつ、仲間を探す。

自分たちの身の回りのことを、記録として残しておく。

それができるのがラジオだった。

今日のあらすじは超展開!

果たして仮想空間の謎は解けるのか!?

僕らの命運を分ける最後の戦いが、今始まる……。

 

2016/11/25 第二十一回

今回のあらすじ

秋学期が始まった。

僕にはこの秋学期が何度目の秋学期なのかわからない。

前回の秋学期の記憶はあれど、その前、僕は何度秋学期を忘れてきたのだろう。

再起動された仮想空間の中で、きっと再起動前のことを覚えているのは一人だけ。

そして、その前に再起動されたことがあることを思い出したのも一人だけだ。

あの暗い世界に浮かぶ無数の猫は何だったんだろう。

頭の中から取り出したその猫のイメージ画像を見ていると、後ろから画面を覗き込む人影が。

「おい、真夜猫。お前、その景色どこで見たんだ」

その人影はZawaだった。

「お前は本物の真夜猫なのか? お前は何を知っている……?」

これは、同じような日々ばかりの世界で、それでも変わる未来を追い求める少年少女たちの、returnとbreakの物語である……。

 

2016/11/18 第二十回 欠席:真夜猫 ゲスト:???

今回のあらすじ

明滅。

僕は地面に倒れている。

頭の中に響く声。

『仮想世界を再起動しています……』

『仮想世界を再起動しています……』

『仮想世界を再起動しています……』

明るい世界に浮かぶ動かない無数の人と、暗い世界に浮かぶ無数の猫。

人の頭から何かが糸のように抜けていく。

猫の頭に何かが水のように注がれていく。

自分の頭からも抜けているのか?

そう思って頭に触った手を通り抜けていくものが、様々な過去を見せる。

この糸が記憶だとわかるのにそう時間はかからなかった。

僕はこの感覚を知っている。

あの夢が、合図だったんだ。

これは、正しく残る過去などない世界で、それでも正しくあるはずの記憶を追い求める少年少女たちの、回顧と栄転の物語である……。

 

2016/11/11 第十九回 欠席:真夜猫 ゲスト:???

今回のあらすじ

箱の外の夢を見ることがある。

そこにいる僕に、心はない。

なぜなら、心は箱の中に入れられてしまったからだ。

箱の外にいる僕の身体は、箱の中にいる僕の心を守るために、箱を守っている。

なにも起きないのに、ただひたすらショットガンを持って箱の外を巡回する僕を、僕は上空から見ている。

すごく寒かったり、暗かったり、そういったマイナスな感情は、心がないから伝わってこない。

魔法が復活した時、この身体はどうなるのだろう。

幸せがどんなものの代償によって成り立っているのか、これを聞いている人には少しだけ考えてみてほしいと思う。

これは、ただで手に入れられる幸せなどない世界で、それでも幸福な結末を追い求める少年少女たちの、争いと未来の物語である……。

 

2016/11/4 第十八回 欠席:真夜猫

今回のあらすじ

冬が近い。

仮想空間にも冬は来る。

とはいったものの、今日は少し寒すぎやしないか。

コートを着てても凍えるほど寒いのだ。

そんな中を歩いていたので、真夜猫はすっかり風邪を引いてしまった。

なんでこんなに寒いんだろう。

表示されている気温は4度。

咳をしながらディスプレイを見ていると、突然、初めて見るような放送が流れた。

「暖房設備が故障しています。現在復旧に全力を尽くしております」

ああ、暖房が壊れてるのなら仕方ないよな。

真夜猫は一人で納得した。

この時少しでも考えてたら、気づいていたのかもしれない。

これは、事前に気づける伏線などない世界で、それでも悪いフラグは折りたい少年少女たちの、創造と破壊の物語である……。

 

2016/10/28 第十七回 ゲスト:さぶぅくん

今回のあらすじ

ほんのいたずらのつもりだったのだ。

Zawaはこっそりさぶぅのパソコンの中を覗いていた。

最近キーボードが効かないので困っているという話だったので、少しだけ具合を見るという体で今パソコンの前に座っている。

まずすることといったら、不審なファイルを探すことだろう。

隠しファイルを表示させて、片っ端から開いていく。

視線はもはや上空から餌を探す猛禽類のそれだ。

あまり面白そうな画像ファイルなんかは見つからなかったが、代わりに隠しファイルの奥の奥に隠された謎のUnityファイルを発見した。

Nakano.unity

開くとそこには今目の前に広がっている風景とほぼ同じ世界が広がっていた。

うまく模倣したんだなーと思いつつその辺にある机を見てみる。

ふとボタンを押し間違えた次の瞬間、画面上から机は消え、目の前に座って本を読んでいたはずの人の本が足元に転がっていた。

パソコンの画面の中だけでなく仮想空間内にあった机すらも消えてしまったのだ。

何も起きていない、そう自分に言い聞かせながらZawaはさぶぅのパソコンを閉じたのだった。

これは、自分に都合の良いだけの真実などない世界で、それでもいちばん大切なことからは目をそらす少年少女たちの、隠蔽と自己暗示の物語である……。

 

2016/10/21 第十六回

今回のあらすじ

仮想空間Nakanoにはラーメン屋が多い。

あの何でできているのかよくわからない謎の麺類が、なぜかまた食べたくなる。

その危険な香りの漂う食べ物を出す店がここにはひしめき合っているのだ。

FMS生はラーメンが大好きだ。

真夜猫はスープを啜りながら、この中毒性やばいよなあとひとりごちていた。

一度食べるとまた食べたくなり、いつしかそればっかり食べていることに気づく。

最近体重も増えてきて困っている真夜猫である。

体重が増えたのに動くのが辛くなっている気はしない。

むしろ動きやすくなっている気がする。

どういう成分が入っているとこういうことになるんだろう。

思考は結局何でできているのかというところに回帰していった。

これは、食べないことより悪いことなどない世界で、それでも時間に追われてついつい食事を摂るのを忘れてしまう少年少女たちの、空腹と不摂生の物語である……。

 

2016/10/07 第十五回

今回のあらすじ

真夜猫は心底驚いていた。

まあ、この世には役に立たなそうな研究をしてる人が多いことだ。

こんなにも多いのか。

しかもそれをどこかで役に立ててるのだから更に驚きだ。

同じ模様をたくさん作る魔法なんて何の役に立つんだ。

手を使わずに折り紙を折る魔法なんて何の役に立つんだ。

電子的なバグを量産する魔法なんて、本当に何の役に立つんだと。

でもどこかで役に立っているのだ。

そんな一見役に立たなそうな研究を面白おかしく話してもらえるFMS特別講義は、真夜猫にとっては癒やしだった。

なんの労力もなく火の玉を出すという、ただそれだけのなんの役にも立たない魔法を思いついた真夜猫にとっては。

これは、役に立たないものなどない世界で、それでもひたすら役に立たなそうなことを必死でがんばる少年少女たちの、青春と浪費の物語である……。

 

2016/09/30 第十四回

今回のあらすじ

FMSには七不思議がある。

1,深夜12時を超えると逆に回る時計、

2,図書館にあるマイナスナンバーの禁書、

3,たまに100円で一枚しか印刷できないプリンタ、

4,電源コードが必ず抜けているパソコン、

5,満月の夜だけやっていない売店、

6,構内なのに稀に降るという雨。

ここまでも、なかなか奇妙なものばかりだが、七不思議の最後が一番奇妙なのだ。

7,七不思議は定期的に変更される。

普通そんなこと七不思議に入れるだろうか。

しかし、変更される前の七不思議を知っているものは誰も居ないのだ。

ついこの間消された七不思議を特別に教えてあげよう。

「終わらない夏休みに囚われる学生」

これは、終わらない締め切りなどない世界で、それでも一時の安寧を追い求める少年少女たちの、片付けとシャーペン分解の物語である……。

 

2016/09/23 第十三回

今回のあらすじ

秋学期が始まった。

仮想空間は今日も晴れている。

疑似太陽の光は、本物の日光ではないはずなのに、なぜだか心が洗われるようだった。

真夜猫は思う。

今回の夏休みも、例年と同じように怠惰に過ごしてしまった。

特別なイベントなんてない。

自分には波瀾万丈な人生なんてきっと訪れないのだ。

それでも、常人並みの人生を、少しだけ努力して、少しだけ成功したい。

まずはこの秋学期から頑張ろう。

夏休みにあった様々な出来事が全く記憶から抜け落ちていることに、真夜猫は未だ気づいていないのであった。

これは、気持ちよく始まる新学期などない世界で、それでも期限内提出を追い求める少年少女たちの、時間の経過と運命の変転の物語である……。

 

2016/09/16 第十二回

今回のあらすじ

長かった夏休みも、ようやく終わりを迎えようとしている。

新学期が近づく中、真夜猫は奇妙な夢に悩まされていた。

荒野に、多くの人が倒れている。

空気は淀み、空は赤い雲で覆われている。

自分は、そこで杖を振り、人に向けて魔法を放っている。

一人だけではない。

自分の顔をしたたくさんの人が、一般人に向けて、自分の知らない魔法を放っている。

こんな不吉な夢は誰にも話せない。

真夜猫は一人、思い悩むのだった……。

この夢は一体何を暗示しているのか!?

これは、良い夢などない世界で、それでも幸せの暗示を追い求める少年少女たちの、夢想と変転の物語である……。

 

2016/09/09 第十一回 @大津

今回のあらすじ

Zawaと真夜猫は、京都に旅行に来ている。

天候にも恵まれ、久しぶりの旅を満喫していた。

真夜猫は京都が好きな方で、Zawaも京都には来たことがあったので、お互いが前に来たとき改修工事中だった建物を回ろうというのが主な目的だった。

まあ、あまり確認もしなかったので、改修工事が終わっていなかったりして、完全に無駄足だったりして、最初は二人で笑っていた。

しかし、おかしい。

どこの神社もどこの寺も、改修工事が終わっていない。

前に来たときのままなのだ。

僕たちの記憶のまま、何も変わっていないのだ。

やがて気づく。

この空に貼り付けたような晴天は、今まで何度も見ていた。

仮想空間の天井とまったく同じだった。

ここは仮想空間の中なのか、それとも僕らの記憶の中なのか。

これは、見知ったチェーン店ばかりの世界で、それでも初めて見る景色を追い求める少年少女たちの、永遠の旅路の物語である……。

 

2016/09/02 第十回 欠席:真夜猫 代理:PERFECTHUMAN田中くん

今回のあらすじ

真夜猫は、正直サボる気でいた。

だって、完璧な田中くんがいて、ざわくんだってしっかりやってくれる。

僕が行く必要なんてないじゃないか。

オープンキャンパスの準備、しかも設営しか手伝わないなら、僕がいなくたってなんとかなる。

というか映画のチケットも取ってしまったし、もう行く気はまるでない。

ところで、夢は魔法の一つの形であるとする説がある。

真夜猫は、自分が2つに割れる夢を見た。

翌朝、目が覚めると、目の前には電話をとる自分の姿が。

そいつは電話を切るとこちらを向き、ニヤリと笑ってこう言った。

「じゃ、準備行ってくるわ。映画楽しんでこいよ」

魔法において、生命の創造は禁忌である。

生命の創造はできないようになっているのだ。

しかし、確かにあれは、僕じゃなかった。

僕の形をした、僕じゃない、新しい生命だった。

一方で、科学において生命の創造は、ソフト面でもハード面でも近い将来実現可能なものになってしまった。

科学の発展によって、魔法も変わろうとしているのだろうか。

これは、永遠などない世界で、それでも変わらないものを追い求める少年少女たちの、試練と成長の物語である……。

 

2016/08/26 第九回

今回のあらすじ

夏休み。

FMSは管理期間に入り、一週間ほど校内の整備、調整を行っていた。

学生たちは思う。

絶対に何か裏で動いている。

大学の中で俺たちに見せられないことをこっそりしているんだ。

Zawaは有志を募り、ひそかに管理期間中の大学に侵入した。

しかしその中はやはり管理期間中の仮想空間。

無数の荒れたホログラムによって迷路のようになっていた。

いつの間にか、仲間とはぐれてしまっていたZawaは、奇妙な光景を見ることになる。

ホールに集まる無数の猫。

数百、数千いるのだろうか。

こんなに多くの数を数えたことがない。

壇上に上がっている一匹の猫は、聴衆の猫が、にゃー、にゃー、と鳴くとそれに答えるかのように、なぜか日本語でしゃべるのだった。

『ふむ、マヨネコダヨー、ですか。これを言えば真夜猫として認識されると、なるほど』

Zawaがふと瞬きをすると、壇上の猫は真夜猫の姿に変わっていた。

真夜猫の形をした何かはZawaの姿に気づくとこう言う。

『あれ、ざわくんだ。今勝手に大学に入っちゃいけないんだよ?』

これは、たった一つの真実などない世界で、それでも自分の納得する答えを追い求める少年少女たちの、探索と発見の物語である……。

 

2016/08/19 第八回

今回のあらすじ

前々回に引き続き、真夜猫は夏の一日を繰り返し続け、次の日を迎えることができなくなってしまっていた。

一方その頃、真夜猫の家の座標に不自然なリア充メーターの乱れを検知したZawaは、真夜猫の家に向かっていた。

Zawaは、リア充している真夜猫を捕らえ、断罪してやろうと息巻いていたが、扉を開いた先にいた真夜猫は、もはやすべてのやる気を失って寝ていた。

部屋は散らかり、リア充とは程遠い惨状だった。

目を覚ました真夜猫は、ざわをみて目を丸くしてこう言った

「今日何日!?」

日付を聞き、落胆する真夜猫。

事情を知らないZawaは、真夜猫宅のリア充のかけらもない有様に目も当てられず、一緒に旅行にいくことを提案する。

真夜猫は今年はじめて訪れる“楽しい夏休みの予定”に、感動すら覚えていた。

今まですれ違い続けていた二つの歯車が、ようやく噛み合い、時が動き出した瞬間だった。

これは、つらい現実の繰り返しばかりの世界で、それでも上を向いて歩き続ける少年少女たちの、勇気と希望の物語である……。

最後にZawaはこう付け足した

 

2016/08/12 第七回

今回のあらすじ

前回に引き続き、真夜猫は夏に囚われていた。

何度進捗を出しても、明けた朝は昨日と同じ。

これは神様がくれた、本当の意味で時間軸から外れた休日なのかもしれない。

しかし、何をしても意味のない一日ほど、やる気の出ない日はない。

真夜猫は完全に生きる気力を失っていた。

その頃、仮想空間Nakanoでは、不自然なリア充メーターの乱れを検出していた。

都内の真夜猫の家ただ一点において、過剰な活動が計測されているのだ。

これは、時間が何度も繰り返されるなかで一人だけ毎回違う動きをしていることによって発生している存在のゆらぎであった。

そんなことなどつゆ知らず、メーターの目盛りを見たZawaは思う。

「真夜猫のやつ、さては家に誰かを呼んでリア充してるな……? さーて、突入してやろうかなあー?」

今まで、数十回繰り返された一日に、一石が投じられた瞬間だった。

これは、生きる意味のなくなった世界で、それでも朝日を追い求める少年少女たちの、努力と進化の物語である……。

 

2016/08/05 第六回

今回のあらすじ

さて、夏休みである。

真面目系クズの真夜猫にとって今までの夏休みは、宿題をしなければという考えに囚われているために大胆に遊べず、かと言ってラスト一週間まで何も手を付けず、親にほぼすべての宿題をやらせるという、非常に生産性のない日々だった。

今年の夏休みは違う。

自分の進捗は、秋学期のカーストに大きく関わる。

しかし、今までまともに宿題というものをしたことがない。

できることなら早く終わらせて永遠に遊んでいたい。

とりあえず進捗を進めなければ。

そう思って開いたラップトップに、昨日の進捗はなかった。

しばしの絶望ののち、つけたテレビは昨日と同じ。

開いた新聞は昨日と同じ。

有名人の飯テロツイートまでも昨日と同じ……。

囚われてしまった。

僕は、夏休みに、囚われてしまった。

これは、時間の不可逆性のなくなった世界で、それでも明日を追い求める少年少女たちの、破壊と再生の物語である……。

 

2016/07/29 第五回 飛び入りゲスト:やまひろ先輩とハチくん

今回のあらすじ
厳しかった試験期間が終わり、夏休みが始まる。
FMSは閑散とし、仮想空間Nakanoにも平穏が訪れていた。
図書室にこもり、ただひたすら魔法の研究に勤しんでいた真夜猫は、とあるつぶやきをみて戦慄を受ける。
Zawa!「今日はみんなで花火見に来た。明日も花火大会で明後日も忙しくて身体が持たねえ(汗)(汗)。」
リア充じゃねえか!!!!!!!!!!
リア充撲滅はどうした!!!!!!!!
撲滅されるべきはお前だ!!!!!!!
……これは、楽しい夏休みの記憶などない世界で、それでも数少ない予定を追い求める少年少女たちの、アイスと冷房の物語である……。

 

2016/07/22 第四回 ゲスト:リーチくんとティーさん

今回のあらすじ

FMSの学生リーチは、落とした単位の数から、落単の王として学内でその名を轟かせていた。

しかし、不思議な事に、彼はもう取れることのない授業しかない日でも、学校に通うのだった。

とある少年が、真っ暗な教室に一人で入っていくリーチの姿を目撃していた。

誰も居ないはずの教室の隅で、虚空に向かって話しかけるリーチ。

彼が語りかける少女、フランの正体とは一体何者なのか!?

これは、救済処置のない世界で、それでも単位を追い求める少年少女たちの、試験とレポートの物語である……。

 

2016/07/20 P演習発表会振り返り特別回 ゲスト:ぼぼ先輩

あらすじなし

 

2016/07/15 第三回 ゲスト:PERFECTHUMAN田中くん

今回のあらすじ

FMSについて語る上で、魔法使いの伝説は外すことができないテーマだろう。

この世界は完全なる完璧な人間が、自分と同じものを作るために作られた世界だと、古くから魔法使いの中で語り継がれているのだ。

そして世界の危機が訪れる度に、その完璧な人間はこの世界に復活して、危機から救うという……。

EP演習発表会に突如現れたPERFECT HUMANを名乗る青年田中。

彼は真の救世主か、はたまたただのホラ吹きか!?

これは、時間のない世界で、それでも進捗を追い求める少年少女たちの、徹夜と寝落ちの物語である……。

 

2016/07/08 第二回

七夕の夜に仮想空間Nakanoで起きた怪事件。

プログラムによって描かれるはずの星空は、七夕のその日の晩だけなぜか灰色に染まっていた。

真っ先に疑われたのはリア充撲滅委員会の委員長として名を馳せていたZawa。

真夜猫は真実を突き止め、Zawaへの疑いを晴らし、星空をもう一度取り戻すことができるのか!?

これは、模範解答のない世界で、それでも正解を追い求める少年少女たちの、裏切りと正義の物語である……。

 

2016/07/01 第一回

仮想空間Nakanoに浮かぶ小さな学校FMSは現代にひっそりと残る魔法学校の一つ。
表向きは先端技術の開拓を目標としているが、その真の姿は、電波の氾濫によってマナのなくなった世界で、科学によって魔法を実現しようとする崇高な理念のもとに立てられた大学校なのだ!
これは、魔法のなくなった世界で、それでも奇跡を追い求める少年少女たちの、愛と友情の物語である……。